このブログの著者について
建築

一級建築士兼気象予報士が教える 吹抜けのメリット・デメリット

eno-archiweather

吹抜けがある明るくて開放的なリビングに、誰もが一度は憧れを抱いたことがあるのではないでしょうか。

注文住宅を建てるときに、吹抜けをつくるかどうか迷われている方も多いと思います。

そこで注文住宅の設計実績120棟超の一級建築士兼気象予報士が、吹抜けのメリット・デメリットを解説します。

メリット

太陽光を取り入れられる

吹抜けをつくる最大のメリットはなんといっても、より多くの太陽光を取り入れられることです。

具体的に太陽光を取り入れるメリットは次の2点です。

  • 部屋の中が明るくなる
  • 冬の室温が高くなる

順番に解説していきます。

部屋の中が明るくなる

リビングの奥の方まで、さらにはダイニングやキッチンまで太陽の光が差し込んでいるLDK。

想像しただけで気持ちよく生活を送ることができそうですよね。

南側のお家がこちら側に近づいて建っているとき時には、1階のLDKに太陽光を取り込むのは難しくなります。

そんな時ほど吹抜けをつくることで、より多くの太陽光を取り込むことが可能となります。

冬の室温が高くなる

冬に太陽光を家の中に取り込むことができれば、室温が上がり暖房費用の節約につながります。

冬の吹抜けからの太陽光は大きなメリットになるものの、夏は対策を講じなければ室温が上がってしまい冷房費用が余計にかかる原因となります。

具体的な対策としては吹抜けに設ける窓にはひさしを計画し、季節による太陽高度の違いを利用しながら太陽光を取り入れる量を調整することが必要です。

開放感がUPする

一般的な住宅の天井高は2.4m前後、高くても2.6mに設定されていることが多いです。

そんな天井高も吹抜けをつくることで、約5.0m前後まで上げることが可能になります。

LDKの面積やLDKに集まる人数の多さによっては、一般的な天井高では圧迫感を感じることもあります。

そんな時に吹抜けをつくれば、視界が上に広がり開放感をUPすることができます。

敷地面積や建物の床面積の都合上、どうしてもヨコへの広がりが作れない場合は、吹抜けを介してタテへの広がりという可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

上下階に一体感が生まれる

LDKにつくった吹抜けに開放的な階段を取り込んだ間取りにすることで、上下階につながりが生まれ一体的な空間とすることができます。

一体的な空間とすることで家の中で居場所は違えど、お互いの気配を感じながら心地よく過ごすことができるようになります。

さらに上手な空調計画を加えることで、上下階の室温を均一に保つことが可能となります。

吹抜けをつくることによって、家の中のどこにいても気持ちのいい状態をつくり出すことができるのです。

デメリット

空調に配慮が必要

暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ向かう性質を持っています。

吹抜けがある場合、暖房で暖めた空気が上へ逃げてしまい、下の階が暖まらないことや、冷房で冷やした空気が下にたまり、上の階が暑くなってしまうことがあります。

そこで暖房を使う時は、暖めた空気が1階を通ってから吹抜けに抜ける工夫が、

冷房使用時には、上から下へと空気が行き渡るようにする空調計画が必要となります。

上の階の床面積が小さくなる

吹抜けをつくるということは、上の階の本来は部屋にあてられたはずの面積を削るということです。

例えば4つの洋室をつくる面積があったとしても、洋室を3つにして1部屋分を吹抜けにまわさないといけないということです。

現在や将来の家族構成、ライフスタイルをしっかりと考え、吹抜けをつくってリビングの明るさと開放感を優先するのか、洋室の部屋数を優先するのかを判断する必要があるといえます。

下の階の音が響く

吹抜けをつくると開放感や上下階の一体感が生まれる一方で、下の階の音が上の階へと伝わりやすくなってしまいます。

懸念されるシチュエーションとしては、吹抜けと寝室が隣接することで下の階のテレビの音などが響き、眠りの妨げとなってしまうケースなどです。

対策としては主に次の2点があげられます。

  • 壁に防音効果を持たせる
  • 吹抜けに隣接する部屋を変える

壁に防音効果を持たせる

吹抜けに隣接する部屋の壁に防音効果を持たせる方法としては、石膏ボードの2枚張りや、壁の内部に吸音効果のあるグラスウールを詰め込むなどの方法があります。

吹抜けに隣接する部屋を変える

吹抜けと寝室を隣接させない間取りとする具体的な方法は、吹抜けの横には広めのホールを設け寝室を吹抜けから遠ざけたり、ウォークインクロゼットなどの静けさを求めない部屋を吹抜けの横に配置することがあります。

まとめ

吹抜けをつくる最大のメリットは、より多くの太陽光を取り入れられることにあります。

太陽は東から昇り、南を通過して西へと沈んでいきます。

そんな動きをする太陽の光を取り入れるために、吹抜けは南に面してつくることが基本的な考えといえます。

上手に吹抜けを計画することができれば、明るく開放的で、上下階が一体となった素敵な空間をつくりだすことができます。

一方で下手な吹抜けをつくってしまうと、無駄に冷暖房費がかかる残念な空間となってしまいます。

太陽の動きを理解し、何のために吹抜けをつくるのかという明確な目的を持つことが吹抜けの計画を成功させる秘訣です。

吹抜けを検討されている方は、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。

ABOUT ME
榎本裕一
榎本裕一
一級建築士/気象予報士
新卒でゼネコンに入社後、現場監督として公共施設、マンション、物流センターなど大規模建築物の建設に携わる。

一級建築士を取得後、注文住宅の設計に転職し現在までに累計100棟以上の住宅の設計を行う。

さらに気象予報士としてもTV局で気象サポートの仕事を行ない、建築と気象の二刀流生活を送っている。

【資格】一級建築士/気象予報士/SDGs検定合格
記事URLをコピーしました